BIKE to 雲南
2020/5/13

BIKE to 雲南


RIDE DATA

天気
気温
5-30
走行距離
380km
獲得標高
?m
乗った飛行機
5機
被害
カメラ水没

とにかく色々な物事が変わっていた。よく言えば進化、悪くいえば陳腐化。

素朴な田舎の観光地の大理か、世界遺産として賑やか麗江とどちらが好きか、というのはバックパッカーの間でも意見が分かれるところだったが、今やどちらも似た感じの街になっていた。

日本でいえば京都嵐山のような、伝統的建物風のべたな土産物屋街が大理にもできていた一方、クラフトビールのお店やいい感じのカフェやリノベーションされたブティックホテルもできている。日本の高度成長期から00年代までの文化が一斉に押し寄せているというのは本当だった。

田舎でこれなので、帰りに立ち寄った上海はもう洗練され過ぎていて、アジアの雑踏的なアナクロな支那情緒はほぼ無かった。外国人が日本の大都市をパスして田舎へ観光に行きたがるのと同様に、中国の中国的な魅力を見つけるには田舎へ行くしかない。

大理(ダーリ)の街

横山光輝版の三国志に出てくるような城門と城壁に囲まれた大理古城。大理石ふるさとでもあるこの街は、4000m峰が連なる蒼山と南北40km以上ある大きな湖の洱海に挟まれた風光明媚な古都だった。かつてはバックパッカーと地元民しかいない場所だったけど、今の古城地区は中国人観光客だらけだった。

すこし郊外に行くと大きな大理石がごろごろしている。
奥に見える蒼山は標高4000mの山々が連なる。

観光地然としてしまった大理だが、朝の学校が始まる時間にはまだ地元の人々の生活が垣間見る事ができる。地元の人向けの屋台などが出てにぎやかだ。ペー族の民族衣装のおばちゃんが農作物を販売している。

そして学校はどこへ行っても豪華で立派に作られていてこの国の教育に対する情熱が感じられた。

蒼山には日帰りでもハイクアップできるが、今回は中腹にある遊歩道を端から端まで通ってみた。以前は手すりが無く、よく滑落して亡くなる人がいると言われていた場所だ。

その後、崇聖寺三塔にも行ってみた。主塔は高さ69.6m。中国史上最も高い仏塔のひとつで最高レベルの国家名勝地区に指定されている。9世紀の唐の時代(日本だと平安時代が始まった頃)に建てられ、地震や戦乱で何度も壊滅した大理で本当に古い建物はこの塔だけだとか。

降りしきる雨の中、麗江へ(160km)

朝5時に起き出し、まだ暗い景色の中を麗江へ向かった。大理(標高1975m)から麗江(標高2400m)で約160kmの予定だが、獲得標高は全く分からないのが不安だ。

出発してすぐ、大理古城の北にある喜州古鎮(村)に着く頃には天気予報通り雨が降り出した。誰もいない早朝の雰囲気は良かったが、先は長いのでレインウェアを着込んで早々に出発。

と思ったら、10kmほどで大理上関で朝市をやっていてまた寄り道。テキパキ働いているのは女性ばかりなのは昔と変わっていなかった。市場はハレの場で着飾っている人も多い。

ときおり激しく降る雨の中、大麗線(221省道)の峠を淡々と登る。標高3000mちかいのかもしれないが調べる手段がなかった。

100kmぐらい走ったところで、鶴慶という町に立ち寄って昼食とる。そしてまた市場を見学した。ここも大理ペー族自治州だが、見かける民族衣装は少し趣が違っている。

小さい峠を越えて、高速道路の路肩を走っているうちに麗江に到着。道はとてもきれいに舗装されていて走りやすく、車もちゃんと避けて走ってくれる。日本の田舎よりも走りやすい印象だった。

麗江(リージャン)

大理よりもさらに古い歴史を持つナシ族の王都、麗江。

昔から世界遺産として観光化された都市だったが、やはり中国人観光客だらけで混雑していた。町域も拡大していて、香香を探すどころではない巨大都市になっている。

ナシ族が面白いのは、トンパ文字という象形文字を祭礼に使う事と、全ての重要事項を女性が決定するという女性優位社会なところ。古代日本との共通項が多いとして照葉樹林文化という概念が提唱された事もあった。

最初に訪ねた宿は満室で、麗江古城地区の端にある丽江老班长青年旅舍に宿泊した。玉龍雪山へのツアーも考えたが、毎日雨予報で眺望が期待できないため断念。代わりに古い町並みが残る白沙鎮まで自転車向かったところ、途中から大雨になりカメラが水没した。

この先が今回のハイライトだが、iPhone6とRICOH THETAのしょぼい写真しか無いので、実際の素晴らしい風景は現地に行ってご確認を。

世界最大級の谷 – 虎跳峡

朝6時ころに麗江を出発。虎跳峡まではおよそ80km。一度金沙江(長江)まで下り、川沿いを遡って行く。玉龍雪山(5596m)の西側を回って行くが、終始雲に覆われて一度もその頂を見る事はできなかった。

360°写真だと伝わりにくいが、この滔々と流れる大きな河が、虎跳峡では川幅30mまで狭まり200mの落差を流れ落ちるらしい。

Post from RICOH THETA. #theta360 – Spherical Image – RICOH THETA

哈巴雪山と玉龍雪山という5000m峰の間のわずかな隙間を濁流となって流れる虎跳峡は圧巻だった。

上虎跳は観光地として整備されていて、自撮り棒を持った中国人観光客が多かったが、その先の中虎跳と下虎跳は昔ながらの簡素な作りだ。

つまり、大理の死人が出る遊歩道もそうだが、たまにテレビで見るようなびっくり仰天超危険な中国的名所なのだ。
入口には歯が全部抜けたナシ族の老婆がいて入場料を取り、謎の言語でまくしたててくる。よくよく聞くと、今日は雨で水が多いから危険だとカタコトの英語で言っているようだ。

OK!と答えて、鉄杭が打たれているだけのほぼ崖ルートを必死に下ること1時間。ライドの疲労と相まって、足がパンパンになった頃に川面についた。

水がこないタイミングをみて濡れた岩に飛び移る。他に誰もいない。失敗すると死ぬので無理は止めましょう。

虎跳峡沿いの道路はゆるいアップダウンの絶景ワインディングロードで気持ち良い。谷は16kmほどで抜けるが、こんどは哈巴雪山の東側に道は続き、白水台などの名所を通りながら、この先200kmぐらいは楽しめそう。今回は走れなかったのが残念なので、大理とか麗江は全部とばしてここだけを走りに来ても良いぐらいだった。

この車道から数百メートル登ったあたりの山肌に、地元住民が生活通路として使っているトレイルがある。全て歩き通すと15時間以上かかるようだ。トレイル沿いにはいくつかゲストハウスがあり、屋上を開放して絶景の中でくつろげるようになっている。

途中に太ももまで水に浸かる渡渉もあり、おばちゃん達が渡るのを助けてあげたりした。

ほとんどが白人のバックパッカーで、過度に観光地化されていない昔の大理の雰囲気が残っていてうれしかった。

チベットの入口、シャングリラへ

虎跳峡から約130km先のシャングリラ(標高3300m)まで。

前半にずっと雨に打たれていたからかあまり体調が良くなく、哈巴雪山の東廻りは諦めて、最短距離でシャングリラへ向かった。この日のコースプロフィールも全く分からなかったが、前半に約50kmほど4-5%の登りが続き、何度も押して歩いた。

途中で同じくシャングリラを目指す地元の若者に出会った。英語も通じなかったけど適当に話しながらしばらく一緒に走った。他にも歩いてシャングリラを目指す中国人ハイカーもいた。チベット圏の入口まで到達する事はひとつのステータスなのだろうか。

住まいは麗江だそうな。

とにかく長く辛い登りが続き、高原らしき場所を過ぎてからは60kmほどずっと下り基調だった。

峠の茶屋にはチベタン・マスティフのイラスト。下りに入ると一気にチベット色が強くなり、沿道に見える家の形が変わった。全ての家がでかい。

理想郷? – シャングリラ

デチェン・チベット族自治州の中心都市シャングリラ。このたいそうな名前は2005年に中甸から改称された新しいもの。チベット文化圏の東の端にあたる。以前は、ここから地元住民にまぎれて陸路入境を禁止されているラサに入る方法!みたいなハウツーがゲストハウスのノートに書かれていたのを覚えている。

郊外にそびえ立つチベット仏教の巨大寺院ソンツェリン寺は、ラサのポタラ宮と同じくチベットを統一したダライ・ラマ5世によって建立された。今でも500人の僧が暮らしている。

街中は残念ながら麗江や大理と全く同じ様子に観光地化されていた。売っているものまで同じで、資本の入り方が見えて一見華やかな観光地が社会性を帯びて見えてくる。

この街での楽しみ方は、シャングリラを起点にして周辺へトレッキングやライドやきのこ狩りにでかける事だろう。ほんの少し走るだけで広大な草原と澄んだ青空の元に良さげなトレイルが見えてくる。

ようやく面白くなってきたところだったのに、今回はここでタイムアップ。

都市化の波から逃れるように、かつて茶馬街道とよばれた道を走って辺境へとやってきた気分でいたが、急速に進化する中国のスピードを追い越す事は難しかった。今回乗った新幹線(のような電車)と高速道路は大理からさらに延伸中で虎跳峡に長大な橋をかけている途中だった。1週間ほどかけて走ったルートは2時間程度の電車で行けるようになり、ジェームズ・ヒルトンが遥か彼方の理想郷のモデルとして描いたシャングリラの街は誰でも簡単に行ける観光地になるだろう。

そしてそれは、中国によるチベットなどの少数民族の支配と、一帯一路政策の推進の結果でもある。あらゆる場所に設置してある監視カメラとオービス、IDカードの信用情報やネット情報統制の現実は、今の中国を強烈に印象づけるものでもあった。綺麗な景色だけでなく、社会風景が見えるのも旅の醍醐味ではあるが、知らない文化に初めて出会うようなカルチャーショックは、このシャングリラの草原や、虎跳峡の先へと走りに行かないと得られないようだ。自分でも行きたいが、この先を見せてくれる他の人のライドやハイクにも期待したい。


Todays Bike

-BIKE SPECS-

BikeRew10WorksBreakaway CX
ComponentShimanoUltegra & Alfine
WheelChris King
Velocity
Chris King SS Hub
Aileron Rim
TireSimWorks by PanaracerVOLUMMY 700×38c
BagPorcelain RocketEl Gilberto Frame Pack
BagPorcelain RocketMr.Fusion V2
BagPorcelain RocketNigel
BagPorcelain RocketMini Slinger
CageKing CageManything Cage x2
CageKing CageKargo Cage
Phone mountQUAD LOCKOut Front Mount

KingのSSハブは2枚(3枚もいける?)のコグが付くので、フロント2枚と合わせてディングル仕様になっている。手動ギアチェンジは4回ほど行った。

BB下のカーゴケージに工具。メニシングケージに輪行袋とダウンジャケット。フロントバッグに食料やバッテリー。スリンガーにはペットボトルやお菓子。その他はウェアが入っている。BB下のボトルは予備の水。使い切る事もあった。

フレームバッグは防水ではないので、ビニール袋に入れてから収納する。ほかは完璧な防水で激しい雨でも浸水しなかった。

-RIDE ROUTE-



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