BIKE to 山道祭
2019/11/3

BIKE to 山道祭


RIDE DATA

天気
岩手山
2,038m
走行距離
164.6km
獲得標高
1200m
宿泊
網張温泉

関西人にとっての東北地方はどんな文化があるのかイメージがわかない未知の領域だ。逆に東北人にとっては、関西以西はそうなのかもしれない。

岩手県の岩手という名称も、盛岡の旧称としての不来方(こずかた)も、鬼の伝説がモチーフになっているし、柳田國男の遠野物語のイメージもあって、南部、津軽、出羽というエリアには未だに日本昔話の異界のイメージを想起してしまう。その一方で、深い森と豊かな野を持つ縄文的な暮らしの理想郷としての憧憬もある。本来は白河の関を越えて一歩一歩と奥の細道に足を踏み入れたいところだけど、今回は飛行機でひとっ飛び。簡便ではあるけど、この奥州に対して憧憬と畏怖を以て背筋が伸びることには変わりはない。

一昨年に青森を巡った BIKE to ねぶた でもそんな事を書いたなと読み返しながら初めて訪れる岩手へ向かった。そんな大層な心持ちで臨む自分とは裏腹に、軽々と越境して人と文化のネットワークを構築するハイカー達のお祭り「山道祭」が開催されるのだ。

やはり便利なFDAの飛行機輪行ボックス

岩手県まで行くのは遠いなぁというのが最初の印象だったけど、FDAが名古屋飛行場から会場近くの花巻まで運行している事を発見して、すぐ行く事を決めた。

FDAは小さな航空会社で、地方空港を結ぶ路線をメインに運行している。値段もLCCほど安くはないけど、大手よりは安い、という具合でちょうど良い。今回は名古屋-花巻往復で33,000円だったので、車や電車で行くより圧倒的に安いし速かった。

そして最も重要なのは、輪行用のボックスを無料で貸してくれること。サークルズから13kmほど走って名古屋空港に到着すると、予約したボックスを受け取って自転車と荷物を放り込むだけ。この飛行機輪行の手軽さは強烈で、これがあるから飛行機に乗ろうと思えるほどだ。

日が落ちてから花巻に到着。台温泉という古い温泉街の和風旅館へ向かった。台温泉(だいおんせん)の台は森を表すタイというアイヌ語に由来している。つまりこの地が日本の統治が及ぶ前からの温泉地ということだ。

翌早朝に宿を出発し、稲刈りが進む北上盆地の広い田畑のあぜ道を走って紫波町のオガールに向かった。補助金に頼らない新しい公民連携事業として以前から興味のあった場所だ。山と道アンバサダーでもあるknottyさんもここにお店を構えている。
オガールでsklarのモンスタークロスに乗るサカイさんと合流。北上川河川敷のグラベルを走って盛岡を目指した。

南部藩の中心地だった盛岡に予定から30分遅れで到着。岩手の自転車カルチャーの中心地、BICYCLE SHOP GRINSさんで、RawLow Mountain WorksのリョータローさんとRapha大阪のoguu、ショッキングピンクのSALSAに乗るザキヤマさんに合流。さっそく日本最大の農場、小岩井農場方面へと向かった。

予定より時間が押してしまったため、小岩井農場はご飯を食べただけですぐに出発。重要文化財の農場建築見学はまたの機会に。

目の前に迫ってきた岩手山の山麓をキャンプ道具を積んだバイクパッキング仕様の自転車で登っていく。身軽なロードバイクなら何てこと無いルートもキャンプ荷物を積むだけで倍ぐらいの強度に感じるハードコースに変わる。

会場に到着すると、今回の祭主の二人、夏目さんと豊島さんが上機嫌で迎えてくれた。すぐに開会式が始まるよ!みんなどこから来たのか手を挙げてもらうから応答してね!と。

遠くは台湾や香港、九州や四国など、全国から集まっていた。そして半数は東北ローカルのハイカーたち。

山道祭

祭りの多くは元々は五穀豊穣や死者の冥福を祈る儀式だった。そういう基層文化の祭りは、”見てもらう”事を前提にした表層文化の祭りに比べて地味なものが多い。#大祭風 として全国の祭りを拝見しに行く場合はよそ者でも楽しめる派手な祭りを選ぶけど、自らが参加する側であればどんな祭りでもそれは特別になる。山道祭はもちろん全員参加の祭りなので、あとはもう心持ち次第。とにかく最高だった。

南部藩に伝わる謎の盆踊りナニャドヤラは保存会の人が唄いながら踊っていて格好良かったし、バンドセットのイマジン盆踊り部は浪花節ばりのグルーヴで踊りの輪をぶん回していた。

久しぶりTENT SAUNA PARTYも相変わらず最高。

翌日にもう一泊して岩手山へ

明け方に雨がビビィを叩く音で目を覚ました。2日目は岩手山に登るか野湯を探しにハイクする予定だったけど、予報と違ってなかなか降り止まないので、もう一泊する事にした。

もともと山道祭は山を越えて歩いて集まろうという呼び掛けだった。以前に山と道と一緒に開催したRIDEALIVE特別編”TOE to TOP“に参加してくれた齋藤くんは前後1週間も山歩きをしていたし、大ちゃんも同じく。oguuuは弘前から津軽下北の両半島を回る600km以上走って来ている。そんな越境者達の影響でどうしても目の前の岩手山を歩きたかった。

登山口の小屋泊が良いよと地元のおっちゃんに教えてもらって、夜中の3時にその小屋を出発。真っ暗な登山道を歩き始め、明るくなる頃には森林限界を越えていた。不動平避難小屋でご来光を拝んで、お鉢を一周。風は強かったけど快晴で絶景だった。11時頃には下山できた。

登山口にデポした自転車に乗り換えて盛岡まで下る。GRINSさんでじゃじゃ麺屋を教えてもらって立ち寄ったあと、花巻空港へ向かった。紫に染まる夕焼けの空を後ろに振り返ると、北上盆地に大きくせり出す岩手山の力強いシルエットが見えた。今朝あそこのてっぺんにいたのが不思議な感覚だった。


かつて旅行や移住の自由が認められていなかった時代にも、独自のネットワークを作り、自由に移動しながら暮らしていた山伏や木地師のような職人集団や芸能集団いた。彼らが閉鎖性の高い定住者社会に体得した知識や情報を伝播させたように、山と道は山歩き文化の新しい道具とコミュニティを全国に伝えて広げるHIKE LIFE COMMUNITYという活動をしている。そしてそのカルチャーミックスの集大成が祭りというはまさに文化が発展してきた軌跡そのものである。

土地としてのローカリズムの他に、自転車なら自転車だけ、ハイクならハイクだけという文化のローカリズムもある。八ヶ岳の時に散々書いたけど、それぞれの楽しみ越境する事でまたそれぞれの文化に還元されるアイデアがある。初めての土地、初めての祭り、初めての人に交流したライド&ハイクはとにかく最高だった。

山道祭の企画としてBIKE to 山道祭の呼びかけてくれた山と道スタッフの皆さんありがとうございました。

山道祭
https://www.yamatomichi.com/news/16776/

BIKE to 山道祭
https://www.yamatomichi.com/news/18504/


-RIDER STYLES-

-BIKE STYLE

装備メモ

メッシュフレームバッグ
新しくカスタムオーダーしたポーセリンロケットのメッシュ素材のフレームバッグとサドルバッグ。雨のキャンプで濡れた装備を入れておくのに重宝したのは狙い通りだった。

バイクパッキング
ハンドルをフラットバーにした事でフロントバッグのMCAドライバッグのナゲットの組合せでフル積載できるようになったため、サドルバッグの小ささをカバー。
ナゲットの中にパッドを入れて形を出し、寝袋(mont-bell#3)を中心に、サイドにハイク用のバックパック(山と道MINI)とバーナーなどの食事キットを入れた。フレームバッグにはビビィ(OR HeliumBivy)と工具、バッテリーなど。サドルバッグには軽い衣料系をまとめて入れて、ハイク用のサンダル(Bedrock)をくくりつけた。
手持ちはカメラのみで、全て自転車に積載した。

ウェア
雨で5℃ぐらいから20℃までを想定。ダウンジャケット(Nanga)、ウールフーディ(山と道)、タイツ(ユニクロ)、レインフーディー(山と道)、レインパンツ(mont-bell)、ショーツ(山と道)、Tシャツ、ソックス(アトリエブルーボトル)。

キャンプ
いつも通りビビィ泊。荷物はナゲットに入れて外に置き、カメラ等はビビィの中へ。土砂降りの時間もあったけど問題なし。会場以外での食事はSmall Twistのミートソース。ちょっと高いけど美味しい食事はカロリー以上のエネルギーになる。

ハイク
本格的なナイトハイクは初めて。ヘッドライトと自転車ライト(CATEYE VOLT300)を両方持ったけど、バッテリーの持ちが心配でヘッドライトだけで歩く事に。やはり1灯だと遠近感に乏しい。ベッドロックサンダルでの登山もだいぶ慣れてきた。


close