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2021/10/1

【RAL 】Tonbo Jacket is flying in.

「自然というのは、すなわち何だ。」とボスが聞いてきた。「美しいもの、ですかね。」と、いきなりで何のことかわからなかったが、平静を装って、さも普通のことのように答えた。

 「違うな、自然というのはすなわち、暴力だ。」

 ふん、そういう話か。よしよし、この手の話を聞くのは大好きだ。配送伝票をまとめる作業を中断して体をボスの方に向け続きを促した。

 「俺たちは自然には勝てない。地震、津波、火山、触れるとあっさり死んじまうだろ。抵抗はひねりつぶされ、後にはなんにも残らない。無残ってやつだ。日本でも大きな災害がいくつもあったよな。そうだお前、マウンテンバイクはやるか?」「メッセンジャーだけだよ。」「そうか、まあいい、とにかくだ、お前がいつも仕事で走ってるストリートにいるタクシーだとかトラックとか、そういうものを自然だと思えってことだ。下手に触れるとあっさり死んじまう。」

 ああ、なるほど、今日2回もタクシーとぶつかってそれで貰えなかったオーダーがあった。そのことを言ってるんだな。


 RALから新しいジャケットの案内メールが来ているので引用してみよう。

トンボをモチーフとしたサイクルジャケット

トンボの視界は左右上下に270度を超え、その特筆すべき時間分解能によって世界をストップモーションのように捉えている。急な進路変更やホバリングもお手の物、ちょっとした移動にも飛行を選ぶ。私たちの新しい冬用ジャケットはそのトンボをモチーフとしたサイクルジャケットです。

ここのウールの靴下が調子良くて何足も持っている。シャンブレーシャツも良かった。けどやっぱり靴下。「服屋で買うものなかったら靴下を買え。」古着屋の先輩の言葉だけど毎日外で過ごすメッセンジャーにとっても靴下は大事だ。

 なるほど、自転車に乗っていると、他の虫は割と良く顔や体に当たるけどトンボはぶつからない。そういうことか。すごいな、トンボ。

続けて引用してみよう。

自転車に乗るために考え抜かれた形状

スッキリとしたシルエットと自転車に乗るために立体的に構成されたアーム、そして様々な機能を備えることで、街中での日常使いから休日のサイクリングまであらゆるシーンで活躍する1着となっています。

撥水耐水性・保温性を備えた素材

表地はテフロン加工がされているため、撥水耐水性を備えます。また合わせて防汚性、耐久性にも優れているため、少しの雨や雪の中でも活躍します。
そして裏地は高密度のマイクロフリースを用い、優れた保温性能を備えますので冷たい風が身を切るような寒い日にも暖かさを提供します。

長く立体的なアーム

アーム部分は細身でありながら、乗車時に自然とハンドルを握ることができるように立体的な構造となっています。
また袖も長めの設定となっていますので、グッとハンドルに手を伸ばす乗車姿勢になった時も、捲れ上がることなくしっかりとと手首を覆います。

袖口には親指を通すのことのできるサムホールを備えているため、袖口からの風の侵入を防ぎ、暖かさを保ちます。

長めに設定された背面の着丈

前傾姿勢をとったとき、腰回りが捲れ上がると寒さが身に染みます。トンボジャケットは背面着丈が長く、隙間をうまないように腰回りにフィットする設計となっています。

ダブルジッパーを採用

フロントジッパーは上下からスライドが可能なダブルジッパーを採用していますので、サドルに跨り前傾姿勢をとった際に腰回りや腹部にストレスがかかりにくいよう調整が可能です。また外気を目一杯取り込むウェア内に籠った熱を排出する際にも効果的に作用します。また脇にはベンチレーションを備えているため、ウェア内の熱を効率的に発散します。

スッキリとした形状のフード

フードはしっかりと頭を覆いながらも左右の視界も確保しやすい形状となっています。 また備えられたドローコードをグッと絞ればフード内へ侵入する風を軽減します。
また襟の高く、首回りもすっきりとしたシルエットとなっていますので、ネックウォーマーとしての役割も果たします。

あらゆる場面で活躍するポケット

ハンドウォーマーポケットは冷えた手を暖め、また左胸のポケットとサイクリストが必ずといっていいほど欲するバックポケットを備えることで、ライド時のストレスを最低限に抑えつつ、様々なものをジャケットに収納することが可能です。

全体的にすっきりとしたシルエットなので、カジュアルな装いとマッチするのはもちろん、ビブタイツなど、レーサースタイルの装いにもマッチします。

なるほど、なんとなく理解した。

メールの最後にある”注文する”ボタンをクリックして注文する。届くころには秋も深まっているだろう。


 「逆らうな、流れろってことだ。イチのようにな。」「イチ?」「ザトーイチだよ、知らないのか、シンタロー・カツだ。」

 座頭市は見たことがないけど、まあ何となくわかるし、確かにその通りかもしれない。

教訓:人間が運転してるからと思って気を許しちゃいけないってこと。当たって下手すると死ぬ、圧倒的にこっちの分が悪い。逆らうな、流れろ。

 メッセンジャーをはじめて18回目の冬がもうすぐ来る。人はトンボのように世界を超広角なストップモーションで見ることはできない。だが人は彼らより視力が高い。長い経験で処理速度も上がっているはずだし、視界も180度ぐらいはあるような気がする。ジャケット、グローブ、ウールのサイクリングキャップ、天候への備えを忘れずに。そして教訓、逆らわずに流れる。

 ありがたいことにこの街のビジネスはまだメッセンジャーが走る余地を残している。少しだけ未来がある。では街中でお会いしましょう。

 

Text by Izuru (Daisy Messenger, Daisy Print Works)



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