懐古と進展の休暇
2017/2/25

懐古と進展の休暇


by カモ by タカ

RIDE DATA

天気
最低気温
-3
走行距離
53.8km
獲得標高
748m
ライド時間
12時間
焦がした油揚げ
4
キャンプ場
クオーレの里

「今の駅で降りた方がよかったかもしれません…」

 
少し時間を戻すこと約20分前。平日の朝、通勤ラッシュの名古屋駅は当然のように行き交う人たちでごった返していた。
通行の妨げにならないように隅っこの壁に自転車を立て掛る。 荷物をパッキングした自転車を押し歩いている時点で奇異の目を向けられているのは感じているが、輪行袋を広げ車輪を外し始めると人によっては立ち止まり眺めたりする。 大学生のサイクリング部時代に同じように何度も輪行をしている身としては慣れた環境で、今では心の中で大道芸をやっている気持ちが持てるくらいになっていたりする。 チップを貰うことは出来なかったが電車には無事乗ることが出来た。

車内で地図を見ながら目的の美濃太田駅周辺をリサーチしていると、それよりも手前の岐阜駅で降りて北上するとルート的にも時間的にも良さそうなことに気付いた。 しかし電車は出発してしまった。 もうしょうがない、というより。 まあ、どうにかなるさ。 という気持ちが勝っていた。 なんてったって、道さえあれば自転車で進めるのだから。
そう心の中で納得させ、僕達は美濃太田駅に降り立った。

一路、山へ向かう

当初のルートを変更したものの別のルートには別の魅力があり、意気揚々とペダルを踏み始めた。
美濃太田駅の西側に走る岐阜県道63号を北上して法仙坊ゴルフ倶楽部の入り口ゲート(途中に金網で封鎖された林道らしき道があって興味を引かれた)を横目に丘へ登っていくと、フッと視界が広がったかと思うと、ポツンというよりスッとした佇まいの建物が出現。

そこは休暇小屋という、店内からも美濃加茂の街並みを見渡せ、流れていく自然を感じることができるカフェ。 そこには文字通りの、時間が切り取られているような空間があった。

テーブルに運ばれてくる段階で香るコーヒーとオーナーがセレクトしたケーキが、少々疲労した身体に幸せを行き渡らせてくれた。

自然を感じ、音楽を聴き、忘れていた時間の穏やかさを思い出せたここは、身体だけでなく心の休暇小屋だった。

 
名残惜しいが僕らが目指すはキャンプ場。 再び自転車にまたがり道に戻った。
休暇小屋から、爽快なアップダウンを繰り返すと大きな道路に突き当たった。 「ん?まさかこれは…」と2人で地図とにらめっこし勘付く。 北上していたつもりが、南東に下っていたようで国道41号に繋がる道に出てしまった。 陽の傾きに焦りつつも県道へと引き返して、岐阜県道97号をひた走る。

青から赤に空模様が移り変わってくると自然にサドルトークは夜ご飯がテーマになる。
「タカさん、何食べましょうかねー」
「夜冷えそうだし温かいのがいいよね。」

キャンプライドの醍醐味といえば「景色」と「名産品」。 キャンプとなれば料理から食材へと意識が移る。 何を使って、何を作ろうか。

「この辺りって何が有名なんだろう?」
「川綺麗だし、やっぱり魚とお茶じゃないですかー?」
空腹を感じつつ進む横目には飛水峡という渓谷が広がっていた。

しかし魚を釣っている余裕もなければ、お茶屋さんもシャッターを下ろしてしまっており、胃から伸びる手が空を掴み始める。
さあ、どうしようか…。お互い口にはしないが焦りの気配を醸し出す。 そんな状況に限ってお店が一向に現れないのがツーリングあるあるなのだが、今回は違った。

飛水峡を流れる飛騨川沿いに建つ豆釜匠。 ここまで文字が食欲を刺激することがあるのかと思いつつ、まるで当然かのように舵が切られていた。
岐阜大豆という、まさに求めていた名産品と出会い騒ぎ始める胃からの手を抑えつつ、豆腐と油揚げを購入。 この時点で2人の頭の中では晩酌がスタートダッシュを決めていた。

キャンプ場は既に決まっていたので、もうひとつの不安要素でもあるお風呂について、店主のおじさんに尋ねると「ここらへんだともっと北上して道の駅まで行かんとないなー。それかキャンプ場に近い白川町の旅館を訪ねるかだな。」
そろそろ陽はお役目御免と山へと姿を消し始め、#TeamRalLoadersの進む道が暗くなっていった。

キャンプツーリング≒ロールプレイングゲーム

悩み立ち止まっていても何も満たされないため、ひとまず白川町へと向かい現在も火を灯している2つの旅館を探した。
白川街道に建つ成田屋。 ダメ元で扉を開けて声を掛けてみたところ「今は忙しいけど30分後ならいいよ」と、湯に浸かったような温まる言葉を頂けた。 もちろんのこと、お湯も沁みるように、冷えた身体の芯がジワジワと温かくなっていく。
湯に浸かれば寒さで強張った身体と共に、会話もほぐしていく。 輪行時のルート変更、山中の登坂路、結果的には道を間違えた下り坂、買い込んだ名産品の豆腐のこと、湯水のように今日感じた物事が言葉となり放たれ、湯気に溶けてく。
ツーリングには温泉は付き物。 それは単にライフサイクルの一部ではなく、コミュニケーションツールとなるからではないだろうか。

 
着々と欲を満たしていくが、僕らにはまだひとつだけ不安要素が残っていた。 キャンプ場の予約をしていなかったのだ。 もうこの文面を見て何人が呆れているかなんて想像はしたくないが、事実なので仕方がない。 キャンプ場の受付時間もとうに過ぎて、為す術なく湯冷めしていくなか、希望の光を思い出した。
旅館にたどり着く前にタカさんが電話をしていた。 電話の相手は、何を隠そう今回のライドの(当初の)ルートとスポットを教えてくれた可児市のえんぎやさん
「キャンプ場の受付が終わってしまって…」
「なら、白川町の寿司屋に行ってみ。店主が知り合いだからさ。」
どことなく漂うロールプレイングゲームの雰囲気を感じつつ、寿し幸の暖簾をくぐった。

「あの…えんぎやさんから教えて頂いて来たんですけど…」
「おう、話は聞いてるよ。とりあえず入りなよ」
もうまさにロールプレイングゲーム。 キャンプ場がカクカクシカジカで…と話すと店主の宮田さんはどこかへ電話を掛け始めた。

「キャンプ場の支配人と知り合いで、話付けといたよ。明日の朝受付してくれたらいいよだって」
行く先々で道が開けていき、人の縁、人の繋がり、人の温かみを実感した。大学生時代のツーリングでは、自由さを求めて基本ひとりでの行動を優先していた。 しかし、それは自由ではなく言い換えるならば孤独であったかもしれない。
宮田さんとお母さんと話し込んでいると地元の方たちがやってきて、あれよあれよと盛り上がっていった。

 
まだまだ話し足りないが、僕らはキャンプをしなければならない。 使命ではなく楽しさを求めて。
みんなに「白川町の朝は、どえりゃー冷えるよ」と心配されながらも、本日最後の目的地へとペダルを進める。

夜23時過ぎのキャンプ場

冬の澄んだ星空と真横を流れる飛騨川の音に見守られながら、テントを設営していく。 さあ、明日も早いし寝ようか、とはならないのが僕とタカさん。 先程手に入れた豆腐たちで晩酌をしないと。


 
 
自分の脚で、力でペダルを回し進む。 路面からの振動、身体を襲う冷たい風。 ガイドマップを見るだけでは決して感じることの出来ない、音や寒さ、匂いの全てが経験、知識となり自分というものを構成するピースとなる。
冬の時期特有の静まり返った夜が、普段よりも思考を加速させているのだろうか。

そうやって夜が更けていく。



Today's Rider

懐古と進展の休暇
-BIKE SPECS-
Frame VeloOrange PassHunterDisc
Brake PAUL COMPONENTS KLAMPER CALIPER Long-Pull
Front Bag RAL FRONT LOADER
Tire SIMWRORKS x PANARACER Homage 650b
Wear OMM Kamleika Race
RAL by DEEPER'S WEAR Fastpass Chino Shorts
RAL HOSE Tabby


by カモ by タカ

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